今井美樹・渋谷毅・ソニークラーク

この2週間ほどで僕にしては多くのCDアルバムを聴きました。1つ1つレビューしようと思ってたのですがダラダラしてしまい、結局いつもどおりまとめて紹介しちゃいます。繋がってる。

◆今井美樹「I Love a Piano」

今井美樹さんのヒット・ソング+αを本人の歌唱+ピアノ演奏のみで聴くことができる、とてもおしゃれなアルバムです。ピアニストは1曲ごとに異なっていて、皆さん有名な方だそうです。

今井美樹「I Love a Piano」

全曲気に入りました。ピアニストごとの演奏の違いが僕にはあまり感じられなかったのですが、それもこれも今井美樹さんのボーカルの力がピアノを凌駕しているからだと思います。歌い方もいいし、声もいいです、よね。特に「瞳がほほえむから」と「Goodbye Yesterday」の2曲が、静かにパワフルで良い。惜しむらくは「Piece of my wish」が無いことかな。でもとてもオススメです。

ところでこの曲はiTunesで購入したのですが、「ルパン三世 愛のテーマ with 大野雄二」みたいに曲名の方に共演ピアニストをつけたのはエライ。なぜならアーティストの方に「今井美樹with誰々」とされたら、管理が煩雑になるから。他の歌手の方も見習ってほしい。よくあるのが「feat.誰々」ってやつ。結構うっとうしい。

◆キース・ジャレット「My Song」

このブログでも紹介しましたが、キース・ジャレットさんが歌う「Danny Boy」がすごくよかったので「これはオリジナルも聞いてみなければ」と思いAmazonで適当に見繕って購入してみたのがこの「My Song」です。

キース・ジャレット「My Song」

やっぱジャズ・ピアノってカッコいいですね。それにプラス、ヤン・ガルバレクさんって人のソプラノ・サックスがとても気持ちいい。僕はジャズに明るいわけではないので、その演奏がどの程度素晴らしいのかを相対的に判断することはできないのですが、なんとなくこのヤン・ガルバレクさんのサックスは特別な感じがします。

タイトル・チューン(という言い方はさすがに古いか?)の「My Song」がほのぼのしていてノスタルジックで好きです。ジャズ、ジャズしてなくて、単に美しい音楽だと感じました。

ただキースさんのうめき声がうるさいです。うめき声や歌声が録音に入ってくるピアニストはよくいます。グレン・グールドさんもそうですね。夜中にイヤホンで聞いてると別の部屋から声が聞こえてくるみたいな感じがしてかなりドキっとします。これ、グールドさんの場合はメロディーを歌ってる感じだからまだ我慢できるのですが(対位法的ハモリ・ラインを歌ってます)、キースさんの場合は単にうるさいだけ。これ、けっこうマイナスですね、僕にとっては。好きな人はそういうの含めて好きなんでしょうが。

◆渋谷毅「solo famous melodies」「solo famous composers」

以前紹介したエスカイヤー誌にてインタビューされていて興味を持ったのが渋谷毅(しぶや・たけし)さん。日本を代表するジャズ・ピアニストです。しかし活動はジャズにとどまらずNHKの「お母さんといっしょ」に曲を提供したり、「ピタゴラスイッチ」とか、あと歌謡曲も書いたりと作曲・編曲でも活躍されてます。1939年生まれとあるのでもう70才近い大ベテランですね。そんな彼のピアノ・ソロの作品です。

渋谷毅「solo famous melodies」渋谷毅「solo famous composers」

エスカイヤー誌のインタビューで「音楽は(何かを)表現するものじゃない」と言い放っているところがクールでカッコいいです。音楽はその音楽自身の持つ美しさだけを表現する、ということでしょうか?けどこの2枚のアルバムをじっくり聞くと、そこからは心の温かさや、やさしさや、ノスタルジーの様なものが伝わってきます。甘さや感情に流されないソリッドな演奏なのにも関わらず。

これが最近の若い人の演奏だとポスト・モダニズムというか脱構築というか、甘さを排除して美しさを追及するあまり、人間味の薄い、ヘンに現代的な演奏になってしまうのかも知れませんが、そうはならずに逆に温かさが染み出てくるところが演奏家としての大きさを感じさせてくれます。

ってなぐらい気にいりました。この人。もともと「Danny Boy」が収録されているということで白い方を購入したのですが朝晩と何度も聞くうちに黒い方も欲しくなり購入した次第です。最近のCDらしく音も素晴らしいです。

どちらもあんまりジャズ、ジャズしてません。特に白い方はまるで久石譲さんのピアノ・ソロアルバムみたいな感覚で聞けます(「Piano Stories 1」に似てるかも)。曲によっては夏の日の早朝に、あるいはタバコの煙がこもった講師控え室?とかに僕をワープさせてくれます。

白い方(famous melodies)には Danny Boy のほか、Smoke Gets In Your Eyes(煙が目にしみる)とかI Can't Get Started(言い出しかねて)とかが入ってます。また黒い方(famous composers)にはデューク・エリントンさんのCome Sundayって曲や本人作の曲、またSkating In Central Park とかが入ってます。

正直知ってる曲の方が圧倒的に少なかったのですが、そんなの関係なしに全曲素晴らしいです。2枚あわせて3,000円なのでセットで買うと良いですよ。

◆渋谷毅・森山威男「しーそー」

そんなわけで渋谷毅さんの他のも聞いてみようということで、平成13年度(第56回)芸術祭優秀賞(文化庁)と第35回ジャズ・ディスク大賞日本ジャズ賞(スイングジャーナル社)を受賞したらしいこのアルバムを買ってみました。

渋谷毅・森山威男「しーそー」

森山威男さんはドラムスです。つまりピアノとドラムスのデュオ。こういう組み合わせってジャズではよくあるんですか?僕は初めて聴きました。

amazon上の「CDジャーナル・レビュー」から引用します。
これはいい。渋谷毅(ピアノ)、森山威男(ドラムス)というベテラン二人のデュオ。「ダニー・ボーイ」「見上げてごらん夜の星を」「遠くへ行きたい」ほか、誰でも聴いたことのある曲が並ぶ。しかしドラムスがクラシック的なダイナミズムをほんとにうまく生かしていたり、逆にピアノは透明感のある音色で淡々と、丁寧にメロディを奏で聴き手の情に入り込んできたりと、デュオとは思えないほどいろんな情景、音楽要素を感じさせてくれる。手慣れた演奏で一丁上がり、ではなくタイトルどおりの誠実な演奏。 (後藤幸浩) --- 2001年10月号
��引用ここまで)


ドラムスの表現力に驚かされます。が、数曲では「正直ドラムス無い方が」と思った僕はまだ未熟者なのでしょう。

なぜか上の白・黒アルバムほど熱心に聴けていません。この辺は好みの問題ですね。

◆ソニー・クラーク「sonny clark trio」

せっかくなのでジャズ・ピアノをもっと聴いてみよう!と思い、とりあえずこれをチョイス。父親からもらったレコード盤を持っているので前から聴いてみようと思っていたのですが、ようやくちゃんと聴きました。

ソニー・クラーク「sonny clark trio」

いいです。キースさんより気に入りました。僕みたいなジャズ素人には「これぞジャズ」みたいに聴こえます。クール。カッコいい。このアルバムにはアップテンポなものからゆったりしたものまでそろっていて、ソニー・クラークさんのピアノ演奏が本当に堪能できます。うめき声もないし(笑)。

ポール・チェンバースさんのベースがまた良いです。僕、イコライジング(高音や低音を強調したりする設定)って全くしない主義なんですが、ベースをより楽しむ意味で低音をブーストしました。硬質で、ピアノととてもよくマッチしてます。僕の持つ数少ないジャズCDの中で唯一ベースマンがリーダーなのがロン・カーターさんのアルバムなのですが、その柔らかくロマンチックなロン・カーターさんのベースとは対極に位置する音です。

ソニー・クラークさんのピアノは単音でつづるメリハリあるメロディラインが身もだえするくらいカッチョいいです。I'll Remember Aprilなんか特に。あとSoftly As Ina Morning Sunriseも特に好きで、シンプルだけど奥深い世界が広がっています。

素人の戯言なので、わかってる人に読まれるのが非常に恥ずかしいのですが、今の僕が正直に感じたところです。

ソニー・クラークさんは今の僕と同じ31歳で生涯を終えてます。そういうところもちょっと興味を惹かれました。ジャズの天才にはそういう人多いですよね。

以上、最近聞いたCDたちでした。ジャズ・ピアノも折に触れて聴いていきたいです。なお今週はKANのコンサート、来週は都響のコンサートと、とある「第九」の公演があるので、それらの感想も書いてみようかと思います。ではまた。

豊かな人生って何だろう…orz。


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