2006年7月26日水曜日

うつくしい子ども

716c3964.jpg石田衣良の『うつくしい子ども』を読んだ。僕にとって久しぶりの「先が読みたい、寝られない!」小説でした。素晴らしい作品かどうかの評価とは別に、非常におもしろい作品でした。素晴らしいけど退屈な小説ってのもたまにありますからね。

この作品は殺人犯として補導された13歳の少年の兄14歳の物語です。読んだ人の誰もがそう思うんじゃないかと思うんだけど「ライ麦畑」のホールデン君に似た語り口の兄14歳が非常に良い。どうやらこの作者は少年を描くのが得意なようだ。

殺人事件にまつわるミステリー小説ないしは推理小説、というカテゴライズがされているかと思うんだけどそれはたぶん違う。解説でも「感動のミステリー」なんて訳のわからないコピーがつけられているが、それもたぶん違う。1つの大きな理由がこの本のカバー。だっていきなり

「弟は、なぜ殺したんだろう?」
「13歳の弟は猟奇殺人犯!? 14歳の兄の孤独な闘いがはじまった」

って書いてるんですよ。最初に犯人がわかっている作品はミステリーとか推理小説とは言いません。

もちろんこの殺人事件については身の毛もよだつようなバックグラウンドがあります。それを14歳の兄が探求していき、最後に何かを見つけるわけで、そういう意味では推理小説と言えなくはない。でもこれはそういう探求プロセスそのものを楽しむ作品ではない。僕が真におもしろいと感じたのは、少年の心の移り変わりに見る成長物語です。いわばこれは少年冒険小説です。

そしてこの作者のすごいところは少年の心の移り変わりの中で、人間が普遍的に持つ悪魔の部分を無理なく描ききっているところです。この小説の恐ろしくて悲しい部分です。

ただストーリー自体は途中から「お決まりコース」になってしまったのが残念なところです。聞けばこの作品が最初の長編小説ということなので、そういうことも関係するのかも。それとも最後のほうはわざと鋭く尖らせていたのかも知れませんが。

村上龍の「イン・ザ・ミソスープ」や、浦沢直樹の漫画「MONSTER」を思い出しました。特に「MONSTER」はどちらかがどちらかを下書きにしたかのように感じます。そういうのって別に悪いわけではないんですけどね。

全体としてはとても良い作品だと思いました。物理的に胸が痛くなるような描写や、物理的に涙が出そうになるような箇所がいくつもありました。そういう作品が僕は好きです。

今度また別の作品を読んでみようかな。

2 件のコメント :

  1. はじめまして。私はめったに読書はしません。でも感想を読んでみるのは面白いですね。犯罪心理には興味があります。勝手ですが私のつまらないホームページです。

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  2. コメントありがとうございます。この本の面白いところは「犯罪者となった弟の心理を知ろうとする兄の心理がいつの間にか予想外の方向に向かっていく」ところです。ちょっとだけネタばれですが。
    それにしてもこんな辺境の偏狭なブログをよく見つけられましたね。丸の内オアゾにあるカマキリは僕も見ましたよ。

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