カモノハシ通信3: 息子が生まれました(4)
カモノハシ通信3: 息子が生まれました(3)
カモノハシ通信3: 息子が生まれました(2)
カモノハシ通信3: 息子が生まれました(1)
ハーマイオニーさん(奥様=魔女)が車いすを押されて病室に戻った後も、僕はそこからしばらくNICUについてのオリエンテーションを受けていました。僕たち両親は12時から20時までの間ならいつでも会えるけど、祖父母たちは「月に1回、決められた時間にしか」NICUに入って面会することができないこと。祖父母以外、兄弟や甥っ子・姪っ子は面会不可。また赤ちゃんが暴れたりした際は、おしゃぶりを強制的につけたり、手足を拘束したりすることもあるので、そのことの了解サインを書いたり(この時に初めて自分の続柄として「父」と記入した)、赤ちゃんに触れる際のルールを聞いたり、などなど。
説明が終わった後、「もう少し赤ちゃんを見ていていいですよ」と言われ僕は暗いNICUの中でじっと子を見つめていました。
これが自分の子供。そういう感覚は全然ありません。この子を守る?父になる?そういう類のことは全く考えられない、フワフワした世界の中に僕はたたずんでいました。
するとナースさんが「触ってあげてもいいですよ」と。それだけ言ってまた向こうに行ってしまいました。今から思えば何の説明もなく(クベースの窓の開け方すらわからない)、あまりに唐突に言われてしまった僕は、かなり困惑しながらもクベースの窓をポチョンと開けて中に手を入れました。
恐る恐る体にタッチします。温かい。
そして足を触ります。ふとももやふくらはぎは、まだ筋肉がほとんどないためか、ものすごく柔らかい。不安になるくらい柔らかい。
そして足の裏へ。最初の足裏マッサージです。僕は子の足裏マッサージを人生のライフワークにしようと決めていたから。意識して足裏を触りました。
その時、子に反応が。曲げていた足を伸ばそうとしたのです。
その伸ばそうとした足の、予想外の力強さに、僕は心をうたれました。その瞬間、僕という人間の組成は一瞬にして何か別のものへと組み替えられました。生まれ変わったと言っていいかも知れません。
子の足をつかみ、伸ばそうとする力に対抗して力を入れてみます。
すると子はそれに対抗するように力強く足をまた伸ばしてきました。
当たり前なんですが、あまりに当たり前なんですが
「この子は生きている」
と、心から思いました。そしてこの命を僕は何としてでも守らなければならないと強く感じました。理屈ではなく、妄想でもなく、疑いようもない程まっすぐな直感で。
病室で寝ている妻を確認し、僕は一度病院をあとにしました。時刻は午前3時。外はわずかに雨が降っています。今までにあまり見たことがないような景色。ここが、これから僕が、僕らが生きていく世界か…などと感傷にふけりつつ、なんとなく愛車を撮影。
翌朝、ハーマイオニーさんからのメッセージが。
「本当に無事に生まれて良かったよ。ダーリンと私のこどもなんだねぇ…
なるたけ楽しく子育てしていこうね」
それに対して僕からの返信。
「楽しく厳しくやっていこう。
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