2006年8月19日土曜日

市内大会ストーリー98 その2

市内02試合は終始ライバルの浜甲、学文をリードする余裕の展開。てなことは選手には秘密だけれど。(僕は密かに各校の点数をチェックしていた)

そして100フリーの時間がやってきた。今日のメインレース2つのうちの1つだ。「メインレース」と言ってもそれは僕が勝手にそう思っているだけ。理由は言うまでもない。キャプテン立田が出場するからだ。僕は選手や出場種目に対してランク付けはしない。みんな大事なレースだ。だけどこの立田の100フリーは特別だ。

立田は今年から専門種目をフリーに変更した。ブレストのタイムが伸び悩み、本人も短距離のフリーには自信があったのでそう決断したのだ。でもすぐにまた壁にぶつかった。本人はキャプテンとして、泳ぎの面でもそれ以外の面でもチームをリードしたかったのに、なかなかそうできない。タイムが伸びないから練習にもいまいち気合がのらない。だから僕たちからは「キャプテンなんだからもっとしっかりしろ」と怒られる。そんなことは自分が一番よく理解しているのに。自分が一番悔しいのに。でもなかなか結果がついてこない。

立田をどうにかすることが僕のもっとも大きな課題だった。特にこの2週間。僕の日記には「立田を無理やりにでも速くして、リレメンに入れる」ということが書いてある。そしてそれ以上に、立田とこれまで以上の心のつながりを持つことが必要だった。要はなんとかして彼をホメてやりたかったのだ。

試合前日彼は「阪神大会にはいけんでもいいけど、ベストは絶対に出したい」と僕に打ち明けてくれていた。僕も同じ気持ちだった。練習中のタイムを見る限りは難しそうだったけど、試合という舞台で僕が、そしてチームが彼のアドレナリンをかきたてることができれば必ずベストは出るものだと信じていた。

結果は出なかった。僕にとっても、彼にとってもショックなタイムだけが残った。周りのメンバーが好調でベストを連発している中なので余計につらい。何故だろう?何でだろう?僕もそう思ったし、彼もそう思っていたはずだ。トボトボとうつむきながら自陣に戻ってくるのを見るのは嫌なものだ。僕が言葉をかけるより先に彼が「ストレッチ行って来ます」と言って裏の倉庫に入った。30秒ほどしてから僕も入ると案の定ストレッチもせずに、仰向けになって伸びていた。悔しそうに両腕を顔の上に乗せて。僕がいるのに気づくと腕をおろして僕の方を見る。胸がつまる。

このとき彼にむかって僕がなんてしゃべったのかはあまり覚えてない。ただひとつ「今日のお前は最高のキャプテンやから、この後もこの調子で頼むぞ」と言ったことだけは覚えている。それ以外には何もしゃべれなかったかもしれない。

次のレース(トラバリーの100Baだった)が始まるころには何事もなかったように、気合の入った声でチームに活を入れ応援を頑張る彼を見て僕はかなり救われた。

1 件のコメント :

  1. なつかしいですね~。昨日のことのように思い出されます。
    今もコーチをやってますが、やっぱりこの辺りが僕のコーチ
    としての原点になっているような気がします。
    続き楽しみにしていますね。

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