2009年6月19日金曜日

ぼくと村上春樹

今も昔も変わらず村上春樹さんの本を愛読し続けている僕です。

以前の僕が村上春樹さんの小説に心惹かれていた理由は結構明快に説明できます。

村上春樹さんの小説の中では主人公はいつも孤独です。しかしそれにも関わらず人生を楽しんでいるように見えます。村上さん本人も、とあるインタビューでこう答えていました。(たぶん1999年頃の広告批評上でのインタビュー)

(ずっと以前から読者の層が変わらず20代~30代前半ということに関して)
��普通読者というのは、作家とともに年をとっていくことが多いんだけど、
��僕の場合そうならないのは、僕の書いていることが、その年代の人たち
��にとって切実なことだからじゃないかな。正確にはわからないけれど、
��それはつまり、人が孤独に、しかも十全に生きていくのはどうすれば可
��能か、ということだろうと思う。

例えば『ダンス・ダンス・ダンス』に出てくる「僕」の様に、『世界の終わりと、ハードボイルド・ワンダーランド』に出てくる「私」の様に、あるいは『ファミリー・アフェア』(短編)に出てくる「僕」の様に、「人が孤独に、しかも十全に生きていく」ということに憧れていました。それが理由の1つです。

それからもう1つ。

彼らは皆「人に頼るくらいなら、自らをより強くすることを選ぶ」というポリシーを持っています。彼らは自らを「その他の人々」より1段高い視点に置いているようです。だからといって偉そうではなく、また卑屈でもなく、世の中を公正に冷静に、いくぶん冷ややかな目線で眺めています。

ネオくるまり

自らを強固な殻で守り、変わらないことを選ぶことに(変わらないために変わっていくことに)使命感を持っているように感じます。それが理由の2つめです。

自らを強く保ち、公正に生きていく姿は僕から見てひどくまともであり、なにより僕はその「まともさ」に強く心惹かれ続てきたわけです。

・・・・・・

それが少し変わってきたのが『スプートニクの恋人』からです。主人公はいつも通り孤独で、いなくなってしまった唯一無二の友人/恋人を探しに遠くギリシャまでやってきますが見つからず途方に暮れます。そして不思議な体験をした後、「人はなぜこうも孤独にならなければならないのか」、荒涼とした月を見上げ主人公の「ぼく」はそうつぶやきます。

と、ここまでは大体いつもの村上ワールドなんですが、ここで小さな革命が起こります。

日本に戻ってきた主人公は、スーパーで万引きした教え子(主人公は小学校の先生)の少年「にんじん」を引き取ります。「どうして万引きなんかしたんだ」と聞いても一切何も話さない「にんじん」に向かって、主人公はとうとうと今の自分の境遇について話します。そして最後にちょっとした秘密を「にんじん」と共有して別れます。

最初に読んだときはその「にんじん」のくだりが持つ意味をよく理解できなかったのですが、今では理解できます。そのシーンは村上作品に登場した初めての…なんでしょう…、なんか特別な関係性です。(それまでの長編で出てきていた主人公と脇役・ヒロインとの関係性とは違うなにか、です。)

つまり「人に頼らず、自らを強く」と強固な殻を築いてきた主人公が初めて、こだわりをゆるめて「人に頼った」シーンです。

ひたすら自らを強くし、自分の中を深く深く掘り進むことで問題を解決してきたスタイルが転換され、他者との繋がり・意識の共有に価値が置かれた瞬間です。

そこから発展して『海辺のカフカ』では主人公の少年と(出会うことはないんだけれど)孤独な老人(ナカタさん)が繋がり、象徴的に助け合う方向へと進んで行ったのだと僕は思います。

そして『1Q84』ではもちろん、青豆と天吾の関係となって現れてきます。

ネオふりかえり

そんなわけで僕は『スプートニクの恋人』がとりわけ好きなんですが、何が言いたかったのかと言うと

・村上さんの小説の変化が、僕自身の変化とシンクロしている(ように感じる)

ってことです。

僕も以前は「人に頼らず、自らを強く」と考え、おそらくは人より堅めの殻の中に(象徴的に)引きこもっていました。他者と距離を置き、むしろ他者を見下すことで自らの心の安定を得ていたフシさえあります。それが最近は変わってきた、そういうことです。

相変わらずダラダラ長文になってしまってますが、一言で要約すると「デタッチメントからコミットメントへ」ってことになります。随分言い古された表現ではありますが。

人との繋がりから生まれてくる「簡単には言い表せないけど温かい何か」を示してくれている村上春樹さんの最近の小説も好きです。昔のも好きだし、今のも好き。ってことで、僕は今後も村上作品をエンドレスで読み返し続けていくことでしょう。

最後にオススメリストです。この順番で読むと僕の言いたいことや僕の気持ち、さらには僕の精神構造までもしかしたら理解してもらえるかも知れません。

『羊をめぐる冒険』
  ↓
『ダンス・ダンス・ダンス』
  ↓
『世界の終わりと、ハード・ボイルド・ワンダーランド』
  ↓
『ねじまき鳥クロニクル』
  ↓
『スプートニクの恋人』
  ↓
『海辺のカフカ』または『1Q84』

うーん、ありきたりな並びだなぁ(笑)。特に絶対に外せないのは『ダンス・ダンス・ダンス』と『スプートニクの恋人』の2作でしょうか?ていうか他のも含めて全部読もう!

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