「新型うつ」という言葉の悪

時間をかけてじっくり書きたいテーマではあるのだけれど、考えすぎて書けないパターンになりそうなのでとりあえず書いてみます。

「新型うつ」という言葉ほど、うつ病患者をおとしめるものはありません。

僕は医者じゃないので詳しくは分からないのですが、「会社には行けないけど海外旅行や合コンにはいける」というのがいわゆる新型うつだそうです。

それに対し、世間一般にある「正しいうつ病」のイメージはきっと「四六時中鬱々としていてベッドから起き上がることもままならない」「何に対してもやる気が起きず暗いことばかり考えている」そんな感じでしょうか?それはおそらく(「きっと」や「おそらく」ばかりで申し訳ないのですが…)正しいです、一面においては。でもそれだけではないのです。

うつ病には必ず波というものがあります。一日の中でもあるし、もっと大きな流れ(一ヶ月単位とか)の中にもあります。つまり下り調子の時もあれば上り調子の時もあるわけですが、それって人間誰しもそうですよね。うつ病の人はその振れ幅が、主に下方向に大きいのだと思います。

もともとうつ病にかかりやすい人のタイプとして「責任感の強い人」というのがあるそうですが、そういう人はえてしてちょっと調子が良くなると「自分はもう大丈夫」と誤認して「その時点での自分の力量を越えて頑張ってしまう」ことがあるようです。特にしばらく低調な期間が続いた後に、上り調子のタームが訪れるとそれが顕著で、調子に乗って昔の友達と会う約束をしたりしてしまいます。

「それって双極性なんじゃない?」というのはもっともですが、(ここからは僕の無責任な持論なのです)それは真ん中より上の振れ幅の大きさの問題であって、元々の性格や元々その人がもっている自分の理想像が高さ具合(えてして高い人が多い)によっては通常のうつ病の人でも「調子に乗る」期間は確実に、そして意外と頻繁にあるものです。僕は何人ものうつ病の方からそれを聞きました。

そういう「調子に乗ってる」期間は、それまでの反動もあって、必要以上に頑張ってしまいがち。最もよく聞いた話が「飲みに誘う」というもの。しかしその結果は全者一様。

ドタキャン。

そしてそのことでものすごく落ち込みます。比喩でなく立ち上がれないくらい落ち込みます。多かれ少なかれ、そういうことの繰り返しです。

治りかけ、のタームでも同様のことはよく起こるようです。「オレはもう大丈夫だ」「リハビリがてらいっちょやってやろう!」という発想がそのきっかけ。何かにつけて必要以上に頑張っちゃいがちなのだと思います。

こういうことから、うつ病は再発しやすいのでしょう。

で、冒頭のテーマですが、確かに海外旅行や合コンに行くのはちょっとマジかよ?とは思うものの、人それぞれ頑張っちゃう人は結構いると思うのです。「新型うつ」じゃなくても。親しい人との昔からの約束や、自分が回復してきたことを(あるいは自分は「そういうんじゃない!」ということを)まわりにアピールしたいがために。

でも大抵の場合、その結果は悲惨です。

そこで「新型うつ」と言われるのは、完全に、なめくじに塩です。本当に消えてしまいます。何もかも。

妙に社会的正義感が高い(と思ってる人)とかは「オレの知り合いには本当に寝たきりになって起き上がれないくらいのうつ病患者いるけど、それに比べたらお前は元気だな」てなことをよく言うわけですよ。どういう真意かは関係無く、それは「お前ただ怠けてるだけじゃん」と患者さんの耳には響きます。

最近の「新型うつ」報道ブーム、特に先日のアエラ(相変わらずアサヒっていた)は本当にひどい。中には本当にそういうステレオタイプ的な「新型うつ」というか「仮病」の人もいるのかもしれませんが、あなたには分からなくても、本当に人生に苦しんでいる人はいるのです。

アエラ2012年6月25日号p14〜p15より抜粋。
これは物事の一面にしかすぎません。
要約は悪ではないけれど、不必要なステレオタイプを意図してる場合は悪だと思う。

アサヒる問題 - Wikipedia
朝日新聞珊瑚記事捏造事件 - Wikipedia
ホント、困ったもんです。

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