都響&コバケン ほか

昨日は都響の定期公演でした。指揮は待望の小林研一郎さん。「炎のコバケン」です。

曲目は昨年、東京文化会館で起きたダブルブッキング事件の際に演奏されるはずだったスメタナの「我が祖国」。(このときのダブルブッキング事件についてはこちらをご参照ください。

第681回定期演奏会 Bシリーズ(5/26)

指揮:小林研一郎

・スメタナ:連作交響詩「わが祖国」(全曲)

コバケンさん指揮棒コバケンさんの指揮棒

コバケンさんは、今まで見たどの指揮者の方とも違っていました。すごい。

1.明快でおおぶりなアクション

まるで音楽と一体となっているかのような指揮ぶり。オーケストラと一体となって、音楽を内側から外へとぶわあっと発散しておられました。都響レジデント・コンダクターの小泉さんのように(つまりはカラヤンさんみたく)オーケストラを支配下に置くような王様的な指揮者ぶりもカッコ良いですが、それとは180度違う感じ。

激しいパートでは(スメタナにはまた激しいパートが多い!)、まるでビリー・ジーンを踊るマイケル・ジャクソンのようにタキシードの「尾びれ」を左手でファッと揺らしたり、あるいはまるで制限時間いっぱいの朝青龍のように体全体に大きく揺らしたりされていて見ていてとても興奮しました。

2.ひびくうなり声

時折「う~」とか「おおお~」とか言った気迫に満ちたうなり声が聞こえてきました。なんか副旋律(もしくは通奏低音)みたいでカッコ良かったです。声を出す指揮者の方は結構おられますが、コバケンさんは特にすごかった。

3.丁寧な態度

楽章の始まりと終わりに必ずオーケストラに向かって丁寧にお辞儀をされてました。そんな指揮者を見たのは初めてです。演奏終了後はびっくりするくらいたくさんの奏者に拍手を浴びせたり、握手をしたりされていました。そういうのってすごく「記念に残る感」があって好きです。

さらには最後に観客に向かってご挨拶。「二十数年ぶりに都響の皆様と演奏させていただいて、その紡ぎ出す音の美しさに酔いしれました…(うろ覚え、すみません)。素晴らしい演奏が出来たのも本日の観衆の皆様のオーラによるところが大きいと思います。また是非機会がありましたら都響との演奏会に足をお運びいただければと思います。」みたいな。お客さんも、奏者の皆さんも、みんな笑顔で楽しく演奏会を終えることができました。

要はとってもイイ人でした。

実際(曲が良いと言うこともありますが)、すごく胸に迫ってくる演奏でした。直球ストレートと言うか、素直に感動的な音がつむじ風のようにホールに吹き渡ります。全然クールじゃありません。でもそこが良い。そうだ音楽とは感動を素直に表して良いものなのだ、とあらためて気づかさせてくれました。(知的でクールなのも好きですけどね。)

クラシックの演奏会なんて、大の大人がよってたかって感動を作り出そうとする、いわば「偽善のカタマリ」と言えなくもありません。でもそれを大真面目に実行するところに本当の美しさがあります。「テキトーにやっときゃいいんじゃん?」的なヤサグレ感は全く感じられません。と、すればそれは偽善ではなくピュアな善なんです。大の大人達がみんなでピュアなものを作り上げようとするところに(そしてもちろん全員が天才的な技量を持ってそれを実行するところに)、何かが生まれ、その何かに僕はひかれます。それはあるいは「軽度の奇跡」なのかも知れません。努力と才能と「心もち」によって必然的に生み出される「軽度の奇跡」を毎回楽しみに僕はホールに足を運びます。

と、言うわけでコバケンさんの演奏会は記憶に残る素晴らしいものでした。

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都響楽譜

ところで最近、クラシックコンサートの感想を何回か書き漏らしていたので、自分の記録のために記述しておきます。

■都響 東京芸術劇場シリーズ『作曲家の肖像』 Vol.72《ベートーヴェン》

指揮:エリアフ・インバル(都響プリンシパル・コンダクター)
ピアノ:ゲルハルト・オピッツ

《ベートーヴェン》
 ・序曲「コリオラン」op.62
 ・ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op.19
 ・交響曲第3番「英雄」 変ホ長調 op.55

実はベートーベン「英雄」を通して聞くのはこれが初めてだったのですが、最初から最後までずっと興奮しながら聞くことができました。帰ってすぐにiTunesで「英雄」を購入。良い出会いでした。

■第679回定期演奏会 Bシリーズ(4/28)

指揮:小泉和裕(都響レジデント・コンダクター)
ヴァイオリン:エリック・シューマン

・ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77
��アンコール)パガニーニ:カプリースより第23番
・R.シュトラウス:交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」 op.30

ブラームスのバイオリン協奏曲がやはり良かった。小泉さんの指揮はやっぱり好きだ!と思った記憶があるのですが、具体的にどの辺が良かったのかは忘れちゃいました。やっぱり聞いたらすぐにブログに書かないとダメですね。

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今シーズンのサントリーホール定期シリーズは昨日で2回目だったのですが、前回から盲導犬を連れて鑑賞にこられているご老人がおられます。演奏中、盲導犬のワンちゃんは座席の下で丸くなってじっとしています。本当にすごいですね。なんだか誉めてあげたいです。


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