インバル都響で辻井伸行くん

僕、辻井伸行くんのファンなんですよ。もうご存じかとは思いますが(^_^)。彼のCDやDVDは「ほとんど」全部買ってるのですが、中でも一番のお気に入りがこちら。「感動のショパン~ヴァン・クライバーン・コンクール・ライヴ」です。この中に納められているピアノ協奏曲1番の演奏は100回以上聞いて、隅から隅まで記憶してるくらい。



※よく似たので「感動のヴァン・クライバーン・コンクール・ライブ」ってのもあるのでご注意。もちろんこちらも素晴らしいアルバムですが。それにしても「感動の」とかタイトルにつけちゃうのは賛否両論かと…。

とにかく僕は辻井くんのショパン・ピアノ協奏曲1番をCDで聞き込んでいて、また2010年にはこの曲をスロヴァキアフィルとの共演で聞いたりもしています。そんな僕が聞いた今日の演奏は…

すごい!!

間違いなく進化してる!!

それも良い方向に!!

いや〜、本当に本当に良かったです。

2012年4月20日
第733回 定期演奏会Aシリーズ
会場:東京文化会館
指揮:エリアフ・インバル
ピアノ:辻井伸行
 
ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 ホ短調


インバル都響と辻井くんの共演を聴くのは2回目です。

今日の演奏会を僕がどれだけ楽しみにしていたことか!僕、普段は都響のB定期の定期会員なわけですが、これは特別です。特別予算を組んで(^_^)、S席を購入。2階の3列目。結論的に、買って良かった…。

ショパンのピアノ協奏曲1番は、青年ショパンが自身の旅立ちの決意や故郷への郷愁を描いたと言われるロマンティックな名曲です。ピアノが、とにかくピアノが美しい…。ピアノ協奏曲だから当たり前なんですが、他の作曲家のそれに比べてもこの曲はピアノ独奏がしめる重要性が高いと思います。オーケストラも非常に効果的で美しい響きを作っていますが、基本伴奏という扱い。なのでシンプル。その分ピアノが際立ちます。

まず第1楽章。旅立つショパンの意気込みが伝わる長めのオーケストラ演奏の後、決意のピアノ独奏が始まります。都響の演奏はやはり素晴らしく、まず弦の響きが美しい。そしてインバルさんならではだと思うのですが、金管楽器が結構きらびやかに場を盛り上げます。その響きのカタマリの中から産み落とされる雷のように、辻井くんのピアノが鳴り響いたあの瞬間はやはりトリハダものです。何でかはわからないのですが、辻井くんがガーン!!と弾いても、全然ウルサクならないんですよね。盲目故に手を高く上げられないとか何とか色々言う人はいますが、とにかく、ガーン!!てやっても出てくる音は本当に美しいんです。

それに繊細なピアニシモ。右手がシングルトーンで奏でる流れるようなメロディが僕は大好きです。

進化を確信したのは第2楽章。明らかに「聴かせる」演奏になっていたと思います。より分かりやすいメリハリ、主張を込めたテンポの組み立て。もしかしたらインバルさんとの調整のたまものなのかも知れませんが、ロマンチック度が上がっています。

だがしかし!

だからといって繊細な美しさが全く失われていないのが嬉しいのです。ウルサイ音楽評論家が有名どころを叩くときによく使う文句が「感情に流されて泥臭い演奏に云々」ですが、そうなってません。間違いなく。

とにかく第2楽章は本当に美しい演奏でした。泣ける。ファゴットとの絡みがまた良かった。

そして圧巻の第3楽章。ほとんどミスのないタッチから生み出される滑らかだけど存在感のある音の波。ここで今回僕が感じたのは「よりショパンらしくなってるかも!」ということ。ところどころCDの演奏とは全然違う箇所があったのですが、そこが何と言うか、より民族的な風合いを帯びたように僕には感じられました。まさにポーランドの舞踏?的な。この演奏をショパン国際コンクールで聴かせたい!全世界に!

インバル都響の演奏も熱を帯びてきて、ピアノとの一体感が高まります。スロヴァキアフィルの時はオーケストラとピアノが互いにらせん状に絡み合うイメージだったのですが、今日の都響との演奏ではもう1本の線になったかのようなイメージ。スロヴァキアフィルの時の感想ではこちら(カモノハシ通信3: 辻井伸行くんのショパン・ピアノ協奏曲1番)に書いてあるとおり「オーケストラの海を潜ったりジャンプしたりするイルカのような演奏」とか書きましたが、今回はそういう印象ではなく、もう「海、そのもの」てなイメージ。息のぴったりさ加減は明らかにCD以上です。

曲の後半は超高速アルペジオがずーっと続きますが、これは興奮しますよね。この動画は別の方が演奏する第3楽章ですが、例えば8分20秒ぐらいからのクライマックスとか聴いてみてくださいよ。これよりすごかったんですから。


これ辻井くんじゃないですからね!!念のため。これも良い演奏ですが。

とにかく、今日は素晴らしい演奏でした。演奏後、オーケストラの皆さんが辻井くんに送る拍手がそれを物語ってました。

今日のエリアフ・インバルさん、矢部達哉さん、辻井伸行さんは、本当に特別な三角形だなぁ…とか訳の分からんことを思ったりもして。

あと今日感じたのは、辻井くんのコンサートの価値が僕の中で、また世間的にも上がりすぎたためか、楽曲の感動を、体験の興奮が上回っちゃってるってこと。つまり「こんな貴重なコンサートを聴けて嬉しい!」って思いが強すぎて、リラックスして曲を楽しめてないって言うか何と言うか。緊張しちゃって。S席に慣れてないっていうか(^_^)。

国際コンクールで優勝する前、まだチケットが楽勝で取れた頃、僕は西宮の小ホールで彼の演奏を聴きました。それも1列目真ん中、目の前で!その時はチケットの値段も安かったためか、今日みたいに緊張せずに、曲そのものをリラックスして楽しむことができていたように思います。サントリーホール大ホールでのリサイタルの時もまだそうでした。

ま、これは仕方ないか。辻井くんじゃなくて僕の問題ですからね。僕が悪い。

それはそうと(すみません夜も更けてきて、まとまりがなくなってきました)、あの山野楽器さんが出した辻井くんの全集。あれ酷いっすよね。この記事の冒頭「ほとんど」買ってるって書いたのは、あの山野楽器の全集が買えてないからです。スペシャルボックスセットとか言って既発アルバム4枚に特典DVDつけて売ってるんですよ今。お金が余るほどあれば買いますよ、そりゃ。でも普通買えないですよ。だって全部持ってるんだから。もっと言うと佐渡さんとのラフマニノフ2番なんて2枚も持ってるんだから(これもチャイコとの抱き合わせ的に買わざるを得ない感じだったから)。山野楽器さん、カンベンしてくださいよ〜。

・・・。

あと今日はショスタコーヴィチ10番もすごかった。そちらの感想も明日?書きたいと思います。

今日は終演後、けっこうゆっくり飲んでいたので(花の金曜日)すっかり遅くなっちゃいました。そろそろ寝ます。お休みなさーいzzz。

7 件のコメント :

  1. アメリカから From America 、私は辻井伸行くんのファンです 。
    I enjoyed your long article about the concert. Mr. Tsujii has developed well and is gaining recognition overseas. His performance of the CHOPIN Piano Concerto No. 1 is as good as it gets, often called "stunning".
    Mr. Tsujii will be performing this concerto next month in Poland (Chopin's homeland), and then in England - I will be there.

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  2. アンコールは? (Did Mr. Tsujii play any encore?) Also, is it true that Mr. Inbal (インバル) did not escort Mr. Tsujii off stage? Thank you.

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  3. No encore yesterday. It was a little disappointing but very satisfied so It's OK!
    Mr. Inbal escort him very familiarly. I was heart warming.
    Thank you for Comments.

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  4. Thank you for your reply, 黒滝-san. I hope you don't mind that I take up more of your precious time.

    May I ask you a couple more questions?
    1. 「 間違いなく進化してる!! それも良い方向に!!」 I agree with you that Mr. Tsujii is developing in the right direction! But do you know if Mr. Tsujii is now taking lessons from a piano teacher or professor? I hope he is, although I understand that he has graduated from 上野学園大学.

    2. What do you think of this blogger's comments on the performance of Mr. Tsijii at the same concert that you wrote about? http://d.hatena.ne.jp/Wanderer/20120421

    Finally, have you read this article about a performance by Tsujii-san of this concerto in England last month? http://www.thisisstaffordshire.co.uk/world-class-performance-orchestra/story-15400743-detail/story.html

    Thank you once more.

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  5. Some people likes to criticize famous artist. Although I Don't know about that blogger, He maybe a that kind of human I think.

    Sorry for my broken English (-_-;)

    I heard BBC & Mr.Sado on TV. That was Great! I really agree with UK site!

    I don't know about Mr.Tsujii's School life. Sorry!

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  6. Thank you for answering your question. Your English is very good - please do not be shy.

    I think you are right about the other blogger.

    May I invite you to visit my website for international fans of Mr. Tsujii? https://sites.google.com/site/nobufans/

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  7. I saw the site. Many brochure of overseas performances I have never seen!
    I'll continuously check your site.
    Thank you.

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