「歓喜の歌」感想

��2008.3.1 頂いたコメントを元に本文を訂正しました。劇中歌っているのは劇中のママさんたちだけです。)

きました、星4つ!★★★★

歓喜の歌


原作は立川志の輔さんの新作落語。実は僕、こないだイノウエ君と一緒に渋谷パルコ劇場にて志の輔さんの落語を生で聞いてきたところなんですよね。イノウエ君に誘われての人生初の落語だったわけですが、なかなか楽しめました。

映画はとても良い意味で落語を超えているように僕には思えます。やはり音楽の力が大きい。ちなみに志の輔さんの落語でも舞台の最後になんと生ママさんコーラスで歓喜の歌をやってました。ある意味ではそんな懐の深い志の輔落語が生み出した一種の化学変化がこの映画なのかも知れません。

どんな映画かというとこんな映画。公式ホームページから抜粋

誰もが忙しく立ち働く12月30日。小さな町を揺るがすその“大事件”は、1本の電話から始まった。

「はい、みたま文化会館です。ええ、コンサートご予約の確認ですね。『みたま町コーラスガールズ』さん、明日の夜7時から……大丈夫ですよ、お待ちしてます」

調子よく応えているのは、文化会館の主任。しかしその直後には、まったく大丈夫じゃなかったことが発覚する!「みたま町コーラスガールズ」と「みたまレディースコーラス」。よく似たグループ名を取り違えたこのダメ主任、コトもあろうに、大晦日の会場をダブルブッキングするという大失態をやらかしてしまったのだ。


てなわけでその主任さん(小林薫)が七転八倒するお話です。

この主任さんの演技が素晴らしく、途中見ていて本当に腹が立ちました。「お前この期に及んで、どーしてそんなに自分勝手でいい加減なんだよ!」と。ムカっときます。つまりはその位、映画に感情移入してしまう、自然に。でも途中で「そうだよな、誰しも人間そんなところあるよな」って納得してしまったり。

僕にとって良い映画とは、感情移入できる映画。別の言い方をすれば、心が寄り添える映画。映画の中の作られた人物や風景にどこまで心を寄せることができるか、それがポイントです。そしてこの映画はとても近くまで心を寄せることができました。

素直に、ホロっときますよ。何回も。

また実際映画のつくりとして非常に優れていると感じます。たくさんの言いたいことや伝えたい事を極めて効率的に整理して上手に伝えてくれる。あれだけたくさんの登場人物/サイド・ストーリーを、破綻させることなく、それどころか極めて説得力を持って伝えきっているその構成力には純粋に感心させられました。ヘタすると詰め込みすぎて、消化し切れていない監督が最近多い中ね。

また選曲が素晴らしい。途中ママさんコーラスの練習シーン、そして本番のシーンと何回か歌が聞けるのですが、「ママさんコーラスなんて全然期待してないもんね」とヒネた見方をしている僕をして、結構ぐっと来ます。

いきなり「翼をください」ですよ。そして意表(とツボ)をつかれた「ダニー・ボーイ」。さらにはノリノリで美空ひばりの「お祭りサンボ」。絶妙!!美しい…。サントラ買うの決定。(さっきiTunes Storeで検索したら売ってました。が、CDだとコーラス譜とかが着いてくるので明日CD屋で買おうっと。なかったらAmazonだな。)

ただ1点、非常に残念に感じたのが肝心の第九。映画のクライマックスとして迫力を出したいのは分かりますが、あそこだけなぜオケ付き?最後までピアノとコーラスだけで勝負したらいいのに。しかも若干テノールが聞こえるぞ。まぁ普通に素直に映画を見てる人には迫力があって良いのだろうけど…。「コーラスだけじゃ物足りないのよね」と言ってるようで、逆に感動をそがれた感も。あとエンドロールのクレイジー・ケン・バンドも全く場違いで興ざめ。な・ぜ・東京レディースコーラス(というのが実際のコーラスを歌っているプロママさんコーラスグループ)ママさんコーラスを使わない!?

でも全体としては非常に良い映画、なので年に数回しか出ない星4つです★★★★

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ところでホールのダブル・ブッキングなんて現実にはあるわけない!と思ってたら、なんと僕が定期会員になった東京都交響楽団による2008年10月予定の公演がダブル・ブッキングで中止になったんです!幸いなことに僕には関係ない東京文化会館での公演だったのですが、100%劇場側のミスでダブル・ブッキングが発生してしまったらしい。一応僕宛にも東京都交響楽団および東京文化会館からお詫びのお手紙が来てました。中止となった公演は小林研一郎さん指揮のスメタナの交響詩「わが祖国」ということで、多くの方が大きな期待をしていたことは想像に難くありません。

一応説明しておきますと、東京文化会館というのは上野にある日本有数の超素晴らしいコンサート・ホールです。サントリーホールにも勝るとも劣らない日本を代表するホール。小澤征爾さんが音楽監督を務めています。そんなところがダブル・ブッキングするんですからね。何となく想像つきますが、親方お役所。東京都民の税金がたくさん使われています。

なんか興味深いので2008年2月5日の産経ZAKZAKの記事を引用します。

「のだめ」オーケストラがカンカン…Wブッキング騒動
ウィーン国立歌劇場オペラと

��つのママさんコーラスのコンサートを年末に二重予約してしまった公共ホールの職員の慌てぶりをコミカルに描いた立川志の輔の落語を映画化した「歓喜の歌」が評判を呼んでいる。そんな中、上野の森の東京文化会館を舞台に、世界に冠たるウィーンのオペラと東京のオーケストラの間でも“ダブルブッキング騒動”が勃発していた。真実は映画よりも奇なり-。

クラシックファンが、おやっ?と首を傾げる広告が先週末、全国紙の片隅に載った。

≪本年10月23日に開催予定の第669回定期演奏会『わが祖国』(東京文化会館)は、ホールの事情により中止させて頂きます。(中略)(財)東京都交響楽団≫

“炎のコバケン”の愛称で親しまれ熱い演奏で知られる小林研一郎の指揮で、スメタナの交響詩「わが祖国」が予定されていた。「都響」には根強いファンが多く、最近はフジテレビ系人気ドラマ「のだめカンタービレ」にも協力して話題を呼んだ。

そのオケが創設以来、綿々と続く定期演奏会を延期ではなく中止とは、尋常じゃない。原因は、ウィーン国立歌劇場公演との事実上のダブルブッキングだった。

小澤征爾が音楽監督を務める同歌劇場は、世界的指揮者のリッカルド・ムーティを擁したモーツァルトのオペラ「コジ・ファン・トゥッテ」来日公演を10月21-27日に行う。文化会館側は、都響公演がある23日夜は除外して、使用承認を出していたが、舞台装置が思いのほか大がかりで途中の撤去ができず、結果として都響がはじき飛ばされる格好となったのだ。

都響の担当者がため息まじりに明かす。

「話し合った上、大丈夫そうな時期に目星をつけ『2008年10月23日』の使用承認を受けたのが昨年7月。ところが11月中旬になって会館側から『実は…』と事情を説明された。代わりのホールを探そうにもどこの会場も1-1年半前から押さえられていて、見つからなかった」

都響の定期演奏会中止は1974年の交通機関のスト以来だという。すでに発売された約1000枚のチケットは払い戻しに応じ、パンフレットの刷り直しなど数百万円の損害が発生。「実費の補償は求めていく」としている。

これに対し、東京文化会館側の説明は微妙に異なる。副館長の松本辰明氏が語る。

「ダブルブッキングとは違います。オペラの公演は、3-4年前に10月16日から11月8日まで、当館を使用する話で準備を進めてきた。これまでも、昼にオペラやバレエの公演を行い、舞台装置をいったん撤去して夜にコンサート、その後に装置を元に戻すということを普通にやっていた。ところが今回はウィーンから持ち込まれる舞台装置が予想以上に大がかりで、簡単に撤去できない。後から知ったんです。都響さんには舞台装置はそのままに仮設の音響板を設置して公演を開くか、日にちをずらす提案もしたが、合意が得られなかった」

冒頭ご紹介した「歓喜の歌」でダブルブッキングに頭を悩ませるホール主任を演じた俳優の小林薫(56)は、舞台あいさつで都響の公演中止に触れてこう語った。

「気持ちが分かるだけにコメントしづらいなぁ。私なら合同公演をやってます」

ZAKZAK 2008/02/05
 以上ZAKZAKからの引用でした。

東京文化会館の人の説明を聞いてるとムカムカしますよね。「予想以上に大がかりだからゴメンなさい。後から知ったんです」「仮説の音響板設置するから」…。お役所仕事とはまさにこのことです。ギョーザが足りてない(落語か映画知ってる人にはわかる)。この事を知って映画見るとより楽しめますよ、ホント。

豊かな人生って何だろう…orz。


2 件のコメント :

  1. 偶然このサイトにたどり着きました。
    >な・ぜ・東京レディースコーラス(というのが実際のコーラスを歌っているプロママさんコーラスグループ)を使わない!?
    自分は映画作成に携わった者ですが、
    映画で歌っていたのは、
    完全にあの映画の出演者だけです。
    CDの方たちはCDの中だけで歌っています。
    あしからず。

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  2. 間違った情報を書いてしまい、大変申し訳ございませんでした。torigakariさんにも辻さんにも大変失礼なことをしてしまったと思います。
    記述にもありますとおり、本当に映画として感動させていただきましたので、それだけは重ねて申し上げさせていただきます。

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