男の闘い(2)

��タイムアタック編>

カート4号車.jpgタイムアタック・・・。この言葉に熱くならない男はいない。タイムアタックで上位に立ったものが予選・決勝を有利に進めるのは明白。一体誰が主導権を握るのか。

冬場ということもありなかなかタイヤが温まらない。いきなりスピンを喫したのは先頭を走っていたクロタキだ。2コーナーでのブレーキングでバランスを崩しあっけなく回転。思ったより滑りやすい・・・。そう思ったクロタキは不適な笑みをヘルメットの中で浮かべていた。

数周したところでイナガキ車にトラブルが発生。強く踏みすぎたためなのかアクセルペダルの取り付けボルトが外れてしまい走行不可能に。修理をしてもらうが練習時間兼タイムアタック時間は大幅に削られてしまった!他の者が14周したところを彼は5周しかできなかった。これは出だしから大きくつまづいた格好、果たして大丈夫だろうか。

イナガキは自分の運転技術に自信を持っていた。

・・・運転ではオレが一番だ・・・。

そう思えるだけの根拠がある。あれは今から8年ほど前、アメリカ・ロサンゼルスでのことである。イナガキとクロタキを含む旅の一行はロスの高級ホテルの1室で「F-ZERO」バトルを繰り広げていた。「F-ZERO」とはスーパーファミコン発売当初大人気を誇ったレーシングゲームである。当時既に時代遅れであった「F-ZERO」がなぜロスのホテルでプレイできたのかは今いち謎である。しかし、彼は他のものを寄せ付けぬ速さを見せ付けたのだ。ショックを受けたのは「F-ZERO」を得意としていたクロタキだ。

・・・か、かなわない、神には。

そうつぶやいたかどうかは定かではないが、イナガキの潜在能力の高さがあらわになった瞬間であった。その他彼は免許停止講習において、模擬運転シミュレーションおよび反射神経ゲームで過去最高得点を叩きだし首席で卒業。今に至るのである。

よって彼の心が折れることはない。残されたわずかな時間の中で勝負してやる!おれは「黒い爆撃機」なんだ!そう叫んで果敢に1コーナーに飛び込んでいった。

イマニシは初めて体験するカートのスピード感に戸惑っていた。カートは地上すれすれの位置に椅子があるため、非常に視点が低い。視点の低さは乗るものに一層の迫力・スピード感・恐怖をもたらすのだ。次から次に迫りくるコーナー、移りゆく景色。すべてが初体験だった。目まぐるしく移り変わる状況、

・・・霞ヶ関から見える景色はもっと緩やかなのに!

そうつぶやいたかどうかは定かではないが、確かにカートのスピード感はお役所仕事とは一線を画するものであった。わずか10分の練習時間でその差異を克服する事は、あるいは難しいかもしれない・・・。イマニシはそう思いはじめていた。

自動車メーカーのプライドに懸けて負けられないミズガキ。地元開催ではあるが残念ながらサポーターの声援は得られず孤独にプレッシャーと戦うことに。

・・・オレの背中で学べ。

そう言っていたときの頼もしい背中はもうない。確かに強がってばかりではだめだ。やはりカートと普通車では感覚が違う。どうしたらいい!?なーに焦ることはない、要は4つのタイヤをいかに使い切るかだ。タイヤの素材はゴム、そしてバンパーはプラスチック、シャーシは鉄。すべてオレには分かっている。問題はない。そうやって徐々に落ち着きを取り戻すとタイムはグングンとあがっていった。

■タイムアタック結果
��.クロタキ 36秒179
��.イナガキ 37秒999
��.ミズガキ 38秒479
��.イマニシ 41秒387

クロタキにとってはここまで全てが計算どおりだった。

・・・予想通り経験の差と体重の差が出たか。フフフこれでレースはもらったな。ミズガキはビビりだしイマニシはもっとビビリーだ。オレ様の敵ではない。しかし侮れないのはイナガキ、ヤツのセンスと経験値には要注意だ。同じ過ちは繰り返してはならない。

どす黒い腹の中でそう考えていた。

次回:男の闘い(3)サーキットに住む魔物編 乞うご期待!


1 件のコメント :

  1. ・・・・おバカさんたちの小競り合いだな・・・ぷぷっ

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